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対象は、著者が聖テレジア病院で入院中に関わり死亡した113人中の末期癌患者45人である。臨死患者に対し精神的・霊的指導に必要な患者の心理状態の把握にはエコグラムやSDSテストを用いた。また、臨死患者に接する医療職者は、自分の専門職以外の文学、哲学、音楽などの勉強が必要である。死に直面しては、医者も患者もPascalがPenseesで述べているごとく等しく“un roseau”(弱いもの)であることの認識が重要である。

 

Key Words
死の準備教育=Death Educationパストラルケア(臨床司牧)=Pastoral Care
エコグラム=Egogram SDSテスト=SDSTest
クラスター分析=Cluster analysis

 

はじめに
末期癌患者の入院から死亡までの間に死の準備教育ができると告知(正確な病状説明)が容易になり、告知により患者は自分のからだの状態を正確に把握できるので、残された貴重な時間をより大切に過ごすことができる。
そこで告知の過程に見られる患者の精神的・霊的苦痛に対し、Spiritual Careの一つであるPastoral Careを通して死の準備教育を行い、患者の心を癒しながら、いままでの人生を感謝し、死は人生の敗北ではなく、また絶望でもないということを理解してもらえるように指導したいと考えた。さらに、日野原7)は「医療における心と言葉」の中で、長年の臨床経験の中で、患者さんを治すことは確かにやってきたが、治すよりも治せない病気のほうが多かったことや、生命は何か大きな力で左右されているように思うと述べているが、このことは人の生命哲学の根元に触れているように思う。
なお、Spiritual Careについてデーケン1)は単に宗教的というよりも、宗教の有無にかかわらず誰でも持っている心の次元を指すものと述べている。
対象および方法
欧米ホスピスでは、癌以外の終末期の患者も入院の対象になるが、聖テレジア病院において著者が受け持ち死亡した113人のさまざまな疾患について死亡統計を調べた後、末期癌で、緩和ケアを的に入院し、死亡した45人を検討の対象にした。
聖テレジア病院の死の準備教育は、若干の在宅ケアを除いては入院から死亡までの間に病院で行われるが、末期癌患者の中で可能なものは、エコグラムやSDSテストなどによって心理状態や鬱状態を把握し、さらに告知の過程の中で、Pastoral Care(臨床司牧)を導入し、患者の精神的・霊的状態を理解して、死の準備教育を行い、さらにPastoral Careの面接の結果はカルテに記載してチームで検討し、支援の方法を考えた。
結果

 

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図1 113人の患者についての疾患別の死亡統計

 

図1は著者が関わり死亡した113人の患者について疾患別の死亡統計を調べたもので、これを見

 

 

 

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